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視覚と知覚

視線はどう文章を走るか——Fパターンと拾い読み

PeripheralAttention 編集部 3分

TL;DR

  • 画面上の文章を、人は一行ずつ読まず、Fの字を描くように拾い読みする。
  • ニールセン・ノーマン・グループの視線計測は、左上に視線が集中し、下に行くほど右側が読まれない傾向を示した。
  • Fパターンは「良い読み方」ではなく、設計が悪いと現れる読み方でもある。
  • 重要な情報を左と冒頭に寄せる判断は、この観察から導かれる。

カフェの隣の席で、誰かがスマートフォンの記事をスクロールしている。指の動きを追うと、最初の数行はそれなりにとどまり、画面が下に進むにつれて、指の速度が上がる。視線がどこを通っているかまでは見えないが、文章が「読まれていない」ことだけははっきり伝わってくる。この拾い読みの形を、視線計測の研究は早くから捉えていた。

左上に偏る視線

ヤコブ・ニールセンらニールセン・ノーマン・グループ(NN/g)は、ウェブ上の文章を読むときの視線が、しばしばアルファベットの「F」に似た軌跡を描くと報告した(2006年、2017年に追補)。最初の数行は横方向にしっかり読まれる。次に、少し下がってもう一度横に視線が走るが、距離は短くなる。そこから先は、左端を縦になぞるように下りていく。右下の領域は、ほとんど視線が届かない。

つまり、画面の左上は読まれ、右下は捨てられやすい。これは怠惰の表れというより、限られた注意を効率よく配るための合理的な戦略である。中心視野が狭いという制約を考えれば、全文を均等に走査するほうがむしろ不自然だ。視野の分業については中心と周辺の記事で触れた。

Fは「悪い兆候」でもある

ただし、NN/g自身が注意を促しているように、Fパターンは推奨される読み方ではない。むしろ、見出しや要約がなく、手がかりの乏しい文章に出会ったとき、読者がやむをえず採用する読み方だ。拾い読みされること自体は避けられないとしても、Fの軌跡が強く出るほど、設計が読者を助けられていない可能性が高い。

一方で、見出し・先頭の語・箇条書きといった手がかりを配置すると、視線の軌跡は変わる。読者は左端を縦になぞるのではなく、手がかりの間を飛び移るようになる。読み方を変えるのは読者の意志ではなく、置かれた構造のほうだ。

観察から設計へ

この知見は、素朴な結論に行き着く。重要な語は行の冒頭へ、要点は文章の先頭へ。右下に置かれた情報は、存在しないも同然になりうる。これはバナー・ブラインドネスと地続きの話で、利用者は「探していないもの」を視界から自動的に締め出す。

もっとも、左上偏重を逆手に取りすぎれば、肝心な情報を冒頭に詰め込みすぎて読みにくくなる。Fパターンが教えるのは「左上にすべてを置け」ということではなく、視線には偏りがあり、その偏りを無視した配置は読まれないという事実である。読者がどう読むかを観察したうえで、読まれる位置に置く——順序が逆になってはいけない。

参考・出典

  • Nielsen, J. (2006). “F-Shaped Pattern For Reading Web Content.” Nielsen Norman Group.
  • Pernice, K. (2017). “F-Shaped Pattern of Reading on the Web: Misunderstood, But Still Relevant.” Nielsen Norman Group.
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