バナー・ブラインドネス——なぜ広告は「見えない」のか
TL;DR
- 画面上の広告らしい領域を、利用者は無意識に視界から締め出す。これがバナー・ブラインドネス。
- ベンウェイとレーンの1998年の研究は、目立つはずのバナーが見落とされることを示した。
- 「目立たせる」ほど広告に見え、かえって無視されるという逆説が生じる。
- 無視は学習の結果であり、利用者の合理的な注意配分でもある。
探している情報がページの上部にあるのに、見つけられない。あとで指摘されて見ると、それは色鮮やかな帯の中にあった。広告だと思って視線が素通りしていたのだ。この、広告らしい領域を自動的に避ける現象を、バナー・ブラインドネスと呼ぶ。
目立つものが見えなくなる
ジャン・ベンウェイとデイヴィッド・レーンは1998年の研究で、利用者がページ内の「明らかな」リンクを見落とす様子を報告した。とりわけ、大きく派手で、広告のように配置された要素ほど見落とされやすかった。直感に反する結果だが、注意の仕組みを考えれば筋が通る。
利用者は、ページ上のどの領域が目的に役立ち、どの領域が役立たないかを、経験から学習している。ヘッダーの帯、サイドの四角い区画、点滅する要素——これらは「広告がある場所」として記憶され、視線の走査対象から外される。非注意性盲目が課題への集中によって起こるなら、バナー・ブラインドネスは学習によって起こる。
逆説的な無視
ここに設計上の逆説がある。重要な情報に気づかせようとして、それを大きく、派手に、目立つ色で囲む。すると、その装飾はかえって「広告らしさ」を高め、利用者の学習済みフィルターに引っかかって除外される。目立たせる努力が、無視を招く。
ニールセン・ノーマン・グループの視線計測も、広告に似た見た目の要素が読み飛ばされる傾向を繰り返し示してきた。Fパターンの読み方と組み合わさると、右側や上部の帯状領域は二重に不利になる。位置でも見た目でも、捨てられやすい場所に置かれることになるからだ。
無視は失敗ではなく適応
ただし、バナー・ブラインドネスを利用者の欠点と見るのは誤りだ。膨大な画面情報のうち、目的に無関係なものを高速で除外する能力は、注意の節約として極めて合理的である。問題があるとすれば、重要な情報を「広告らしい見た目」で提示してしまう設計の側だ。
もっとも、フィルターを欺く方向に走れば、別の問題が生じる。広告を広告に見せない、重要情報を装って注意を奪う——それはダークパターンの領域に踏み込む。裏を返せば、バナー・ブラインドネスは、利用者が長年の経験で身につけた防御機構でもある。設計者にできるのは、その防御を欺くことではなく、本当に必要な情報を「広告ではない」と分かる形で提示することだ。無視されたくなければ、無視されている理由を見なければならない。
参考・出典
- Benway, J. P., & Lane, D. M. (1998). “Banner Blindness: Web Searchers Often Miss ‘Obvious’ Links.” Internetworking, 1(3).
- Nielsen Norman Group. “Banner Blindness” 関連の視線計測レポート。